みなそれぞれ、こだわりの持ち物ってもんがありますよね。 GO OUT OUTDOOR GEAR BOOK Vol.2 (NEWS mook) バイクでのキャンプツーリングとなると、やっぱり持って行く荷物も限られています。 できるだけ「シンプル」で「コンパクト」が基本なんだけど、個性的なライダーは制限がある中でも、コレだけは外せない!みたいなミョーなこだわりのある人が多い気がします。 でもそこが面白いんですよね。
ポーレックス セラミックコーヒーミル
コーヒー通なら、どこであろうとやっぱり豆から挽かないといけません。 それが本格派ってもの。 このポーレックスのセラミックコーヒーミルは、小型コンパクトでツーリングに持っていくのにぴったり。
煎り上手
発明工房 コーヒー豆焙煎器・煎り上手 こだわるならトコトンやるぜ! そんなあなたには、生豆からあぶって自分で焙煎する「煎り上手」がおすすめです。 バイクで持っていくにはかなりじゃまですが、ザル式のヤツよりうまく焙煎できますよ。
ショートストーリー:モーニング・コーヒー
まだ夜が明けきらない早朝のキャンプ場。
彼女を起こさないように、そっとテントから抜けだして、明るくなり始めた東の空を眺め、大きく深呼吸した。
初秋の朝は思ったより冷えていて、肺に入ってくる澄んだ空気が気持ちいい。
まだあたりは薄暗いけど、テントの周りの草は朝露でキラキラ光ってる。
テントの横に止めている2台のオートバイも滴で濡れていた。
連休なので他にもテントがたくさん張ってある。
夜露で濡れないようにフライの下の置いていた、小さなテーブルとガスコンロをそっと取り出し地面に置いた。
「コーヒーセット」と呼んでいる、コーヒーを作る道具を入れた袋から、コーヒーの生豆と焙煎に使う「煎り上手」、それと小さなざるを取り出した。
生豆を焙煎器「煎り上手」に入れる。
量は適当だけど、二人で数回は飲める量だ。
ガスコンロに火をつけると、ゴォォーっと勢いよく炎が燃え上がった。 炎の音で彼女が起きるかな?とテントの中を見たけど、ピクリとも動かない。
よく寝てる。
炎から少し離して、豆が一気に焦げすぎないよう「煎り上手」を軽く左右に振る。
そんな僕のこだわりを見て彼女は 「めんどくさそう」 と聞くけど、二人でキャンプの時はこうやって、手間をかけてコーヒーを作るのが好きなんだよね。
カラカラと数分ほど煎ってると、パチッ!パチッ!と音がし始めた。
もう少しだ。 段々とコーヒー独特のいい薫りがあたりに漂ってきている。
チリチリと音が変わり豆の色合いも、よく知っているコーヒー豆っぽくこげ茶色になってきた。 今朝は深煎りの気分。
「そろそろかな」
焙煎器から豆をざるに移してしばらく冷ます。
こうやって豆を煎るのも何度目かな?ずいぶんうまくなってきた、とにんまりする。
もう山の間から朝日が顔を出しそうだ。 すっかり明るくなったキャンプ場に朝もやがたっている。
キャンプ場の朝は早い。 タオルを持った人たちが数人歩いている。
このキャンプ場には温泉の露天風呂があるので、きっと朝風呂に行くんだろうな。
コンロに水を入れたコッヘルを置いて今度はお湯を沸かす。
さて、お湯を沸かしている間にコーヒー豆を挽くとするか。
「コーヒーセット」から今度はポーレックスを取り出して、すっかり冷えた豆を入れる。
まだ彼女は起きない。 テントに背中を向けて、ごりごりごりとハンドルを回して豆を挽く。
このポーレックスは一度に二人分の豆が挽けるから、僕らにはちょうどいい。
ごりごりごり。 ハンドルをまわすたびに、コーヒーの香ばしい薫りがぐんっと鼻に迫ってくる。 「これこれ、これが堪らないんだ」 とにんまりしてしまう。
マグカップをふたつテーブルにならべ、ワイヤー式ドリッパーとフィルターを取り出して一方のマグカップにセットした。
マグカップはチタンダブルマグ。チタン製のヤツで二重構造になっている冷めにくいタイプだ。 ワイヤー式のドリッパーはペーパーの底が下に出過ぎるので、ちょっと先を折り畳んでセットした方がいい。 そろそろお湯も沸いたみたいだ。
ポーレックスののフタを開けると、ぷーんとコーヒー豆の薫りが強くなった。
挽きたてのコーヒー粉を半分入れてお湯を少し注ぐ。 テントを包み込むようにふわっと香ばしい薫りが広がってゆく。
「う~ん・・・」
テントの寝袋の中で彼女が寝返りをうっている。
背中まである長い髪が少し乱れていて、なんだかちょっとドキっとした。
彼女もそろそろ起きそうだ。
コーヒーの粉がしっとりとしたところで、再度すこしづつ回すようにお湯を注ぐ。
すっかり朝日が昇り、あたりはすっかり明るい朝の風景だ。
「うう~ん・・いいにおいがするぅ・・」
挽きたてコーヒーの薫りは、彼女も目を覚ますにはじゅうぶんな威力だったようだ。
狭いテントの中で寝袋から半分からだを出して、寝ぼけた顔で背伸びしている姿がかわいい。 白い湯気がゆらめくマグカップを右手に持ち、テントの中で起きたばかりの彼女を覗き込むようにして、コーヒーの湯気が揺らめくマグカップをそっと差し出して言った。
「おはよう」
オプティマス No.88 HIKER+
OPTIMUS(オプティマス) HIKER+ 11011 廃盤になったオプティマス8Rより、少し大きく重くなったオプティマスHIKER+(ハイカープラス) 大きく重くするなんて、いったい何様のつもりだコラ!と言いたくなります。 相変わらず無茶苦茶タフで、ガソリンだけでなく灯油からジェット燃料まで使えてしまうというサバイバル度の高い、まさに最強コンロ。通好みの逸品。 まぁ今どき国内でこれを使っている人は、かなりのマニアじゃなかろうか、と思ってしまいますけど。
スキットル
バッカス ウイスキーボトル(スキットル皮付き)170ml 「スキットル」とはアルコール専用の水筒の事です。 アメリカやヨーロッパの映画で登場人物が、ポケットからスキットルを取り出してウイスキーをグイッと飲んだりするシーンを見て、なんかかっこいいなぁ!とこっそり思っていました。 スキットルはアウトドアや旅行でお酒を携帯するためのものなので、ポケットに入れやすいよう少し湾曲したものが多いようです。 サイズや素材も様々ですが、携帯用なので大きくても200mlちょいくらい? はっきり言って普段から一升瓶をラッパ呑みしてガハガハ大笑いしているあなたには、ちょっと物足りない容量でしょう。 でも持ってるとカッコイイじゃないですか。 ちょっと高いけど、スノーピークのチタン製スキットルが評判いいみたいですね。 スノーピーク(snow peak) スノーピークチタンスキットルL T-013
ショートストーリー:360度の地平線
「ハラ減ったなぁ」 燃料タンクのコックの間に特別に取り付けたバルブをひねって、タンクのガソリンをオプティマス・ハイカープラスのタンクに移しがらぼそっとつぶやく。
誰もいないので、まぁ独り言だ。
360度の荒野が広がるアウトバックには、見渡す限り木が1本も無く、まったくさえぎるものもない地平線が広がっている。
赤土の荒れた大地には角がある石がごろごろ転がっていて、ところどころに30センチくらいの堅い草の群が生えているだけ。
道はあるけど、道というよりたまに自動車が通った跡、といったかんじだ。
陽はしだいに傾いてきたけど、相変わらず暑く真っ青で雲ひとつない空をひゅうひゅうと熱風が流れていく。 南半球にあるオーストラリアの夏の一日は長い。
もう夕方6時なのに、まるで3時くらいの感覚だ。 ほんとはもう少し走れないこともなかったけど、そんなに急ぐ旅でもないし走ってばかりじゃもったいない。
それに今日はゴツゴツした石のせいで10回もパンクをして、もうくたくたになっていたんだ。
少し離れたところに東西へ一直線に伸びた線路がある。 世界一の直線線路と呼ばれている、インディアンパシフィック・レイルウェイだ。
僕はこの線路を道先案内人として走っている。
オプティマスの燃料タンクのキャップをしっかり閉めて、バーナー部分にどばどばっとガソリンをぶっかける。
「さぁてと・・」
テントとバイクから少し離れ、オプティマスを地面に置いた。
ライターを取り出し、ガソリンが溜まっているところへ火を近づけると、 バッ!!とオプティマスが炎に包まれた。
ついでにその火でそこらから集めていた枯草の束に火を付けた。
大きな木の枝とか無いので、そんなに長くは持たないとはわかっているけど、焚き火が欲しかったんだ。
オプティマスの導管が炎で暖められ、ぶわっ!とバーナーに火が着いた。
最初の頃はきちんとバーナー部分の下にある溝にガソリンをちょこっと入れてプレヒートしていたんだけど、最近ではきにせずドバっとぶっかけてる。
もう何度もこうやって火をつけているので、オプティマスの中はまっ黒にすすけてしまっているけど全く問題なし。
酷いときは焚き火に放り込んだりもする。
「ほんと頑丈なヤツだな、こいつは」
取り外し式のレバーを回して火力を調節し、米と水を入れたコッヘルを置いた。
ひゅうひゅうと変わらず熱風が吹いている。
ごうごうとオプティマスの炎が揺れる。
オプティマスの蓋を立てて風よけにして火力を保つ。
空は相変わらず青かったけど、360度の地平線は少しづつ赤みが増してきていた。
ゆっくりと食事も終わり、食器の汚れは砂でこすって少量の水でゆすいだ。
その頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。
星が地平線からいきなりズバッー!と広がっている。
本当にいきなりだ。
天の川も日本で見るものとはけた違い、淀みなく地平線から大迫力で立ち上がり反対側へそのままひるむことなく続いている。
まさに星の川、唖然として見上げる。
今夜は新月なんだろうか?月は見えないけど、星明かりだけで本が読めそうなくらい明るい。
「・・星ってこんなにあったんだ」
荷物からバーボンの入ったスキットルを取り出して線路の方へ行ってみる。
星明かりで照らされた大地。
地平線の彼方から地平線の彼方へ、鈍く黒光りした線路が一直線にどこまでも続いている。 星空を見上げると、まるでSFの世界にいるような気分。
「すげえよ」
僕はスキットルのキャップをくいっと外し、ぬるいバーボンをひとくちゴクリと飲んだ。
今この360度の地平線に僕ひとり。 他に誰もいない。 昼間の熱風は、いつの間にか冷えた夜風となってそっと頬を撫でていた。 いかがでしたか? まぁこういったこだわりの道具は無くても全く困りませんけど、あればあったで一味違ったキャンプが楽しめそうですよね。 あなたのこだわりの道具は何ですか?
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